CHOI JEONG-HWA x UICHI YAMAMOTO
<Fluorescence orange Lotus> 2012

西山 「オレンジ ロータス」は色んな色で今までも作っているけど、今回も色を変えて新しく作って、「ピンク ピッグ」もまったく新作。

チェ 「コスモス」も新しいです。「マリーアントワネット」と組み合わせて展示するのは、初めてだから。私は、新作のほうがエネルギーが出るの。今まで作った作品だけで展示をする場合は、あんまりエネルギーは出ない。それが、いっつも問題です(笑)。

山本 じゃあ、チェさんにお願いするときは、常に新作をお願いしたらいいんだね?(笑)。

チェ そうです!(笑)

山本 ライブラリの「コスモス」は、最初は安全性とかから、人が入るのはダメということになっていたんです。でも、入らないと意味がないと思ったから、途中少しレイアウトを変えてもらって、見る人に自由に入ってもらえるようにした。

チェ そう。入ってもらいたかった。

山本 相当なチャレンジでした。注意書きに「触ってもいいけど壊さないでください」って書いてあるのも面白いでしょ。チェさんだったらこの作品引っ張ってもいいよ、って言ってくれると思うんだけど、そうすると、直すのが大変だから(笑)。それに、スカートの中とか映っちゃって、スリルがあるのはワクワクしていいよね?(笑)

西山 そうそう(笑)。

チェ 私が '98年に初めて大きな花の作品を作ったときのタイトルは「touch me」でした。だから作品には触ってもいいの。

山本 あとはやっぱり、素材もプラスティックとか、毛糸とか、工事用のチェーンとか、なんかちょっとノスタルジックな気持ちにさせられるんですよね。僕は今年49歳になるんだけど、子どもの頃、プラスティックに囲まれている時代がありましたよね、プラスティックが新しい、という時代が。それが一回りして、若い人には逆に新鮮に感じられるのかな。

チェ 実は、ノスタルジーを感じるという話は、どの国でも言われる。ヨーロッパでも、アメリカでも、オーストラリアでも。みんなそう言います。でも、アジアとは生活スタイルが違うでしょう? それでも彼らもノスタルジーを感じるって言うの。

山本 昔こういう風景が具体的にあったというわけではないんだけど、アートって、気持ちをゆさぶるっていう意味で、普段は考えていないような思いを引き出されるっていうことなのかな。

俊輔 さっき、チェさんが「アートを日常に」っておっしゃっていたけど、チェさんは、日常的な生活の中にあるものを逆にアートに持ってきているんですよね。普通に生活しているなかで、身の回りのものを見て、「これってもしかしたら作品になる」っていう目で見ている。これをこう組み合わせれば作品ができる、っていう発想がすごいと思います。ゼロから作るんじゃなくて周りにあるもので作ってしまうというのが。

西山 そこがチェさんのすごいところで、一緒に車に乗っていたりすると、工事現場のコーンを目にして「アレいい!」とかっておっしゃるんですよね。いつも、そうやって“見て”いるの。実は、「プラスティック コラムス」のプラスティックの食器がウチにあっても、あんまりうれしくないというか、ちょっと安っぽいって思われるかもしれないんだけど、こうして作品になると、なんてキレイなものになるんだろう、と。モノの価値を転化させる魔法を、彼は使っているんだと思う。「マリーアントワネット」に使われている造花にしても、昔どこのうちのトイレにもあったな、っていう感じで、一応生活がスタイリッシュっぽくなって、日本ではあまり見かけなくなったものだけど、チェさんの作品で使われているのを見ると「何て可愛いんだろう」っていう風になる。そういうセンスの良さがあるんだろうなって思う。

山本 一つ一つのモノへのまなざしというのかな、そういうところで、チェさんの優しさが伝わってくるなと思う。ある意味モノにあふれている時代に、ちょっとアイロニーみたいなものも感じるし。

西村 そう。ノスタルジックでもあり、アイロニーも感じる。

山本 今を感じながら生きていて、生み出されるアートという感じがするね。

チェ 私は、大勢の人たちに見てほしいな、ということだけ考えていました。今も、みんな見てるでしょう? 写真も撮って。それだけで意味があります。私はいつも記念撮影のための作品を作っていますから。

山本 フォトジェニックですよね。

チェ ほかの意味はいらないの。記念撮影だけ(笑)。

山本 美術館は、わざわざそこまで行ってチケット買って、それを見たい人が集まる場所。ここは、別に作品を見ようと人が集まっているわけじゃない。

西山 そこが面白い。

チェ でしょう? 昨日も今日も、写真を撮って、30分以上見ているお年寄りの方がいました。なんだか感動したね。彼らは、芸術を見ようとしているわけじゃない。でも、そこにアートが生まれてる。どの国にもある問題点だけど、アートはとても高いところにあります。そうじゃなくて、そばで一緒に遊べるものにしないと。

山本 レストランフロアって、ご飯を食べに来る以外の期待ってほとんどないじゃないですか。そこに、アートと音楽とファッションを融合させたかった。食べるっていう本能、欲求と、こういうものを組み合わせたかったの。

チェ 食べるものも芸術になりますよ。何でも芸術ですから。何でも。

山本 今回はとくに、そういう欲求がうまくミックスできたかなって思います。一緒にやってて楽しいと、空気が、その楽しさをはらむよね。

チェ うん。空気が変わる。

西山 前の十和田市現代美術館での「OK展」でも、町の人に溶け込んで、町の中に作品を置くっていうことをやったんですよね。ホワイトキューブの中に作品を置くのではなくて。